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拙いわたしの拙いぶろぐ

駄目人間代表が適当に書いた小咄をまとめて載せたり、大好きな戦国夫婦について語るだけ

ついのべログ⑤

ついのべログ

よし( •̀ᄇ• ́)ﻭ✧

 

「髪を、短く切ろうかと思っています」腰まである長い髪を靡かせたお姫様は、実に淡白に告げた。「髪を」吃驚して尋ね返す、己を攫った海賊に姫は頷く。「はい。潮風はとても心地の良いものですが、海の長旅にこの髪は向きませんもの」顎に手を遣り姫の言い分を聞いていた海賊は、何かを思ったようにふと呟く。「それは残念だな」どういう意味だろうか。小首を傾げた姫の髪を一房取ると、海賊はそれにそっと口付ける。「僕は君の長い髪が、好きだから」海賊の流れるような動作に人知れず頬を染めた姫は、口付けられた髪にそっと触れる。「―では、切るのはやめます」「そう?」「ええ」「それは良かった」望んだ答えを聞くことが叶った海賊は、満足げに微笑むのだった。

 

肩口に鼻を埋めて、彼自身が放つ香りを満喫する。それは化粧品のような品のある匂いであり、雲間から差す月光のように仄かで、心地よい眠りを誘うようなものでもある。「このままあんたの匂いに包まれて眠りに落ちたい」ふいに漏らした言葉を歓迎するの如く、彼は腰に腕を回した。

 

僕のここに灯った、この感情に名前がつくまで、君は君らしく、笑って泣いて、思うがままに生きていて。君の柔らかい心は、何があっても僕が守ると約束するから。だけどさ、名前がついたその後は、透明の君を僕色に染めてもいいかな。

 

このまま僕等、闇に隠され波に流され息を潜めひっそり生きていかなければならないのだとすれば、それも仕様がないことと受け容れられる。だが、その時は最後の最期、落ちる先が二人同じであればいい。そんなことを思ってしまうのだ。

 

ああ、お客人か。よくぞ来て下さった、どうぞ此方に座ってくれ。ん?ふむ、私の話を聞きに来た、と。私なぞ取り立てて面白みのある者ではないのだがなあ。まあ、いいか。それではお客人、これから私が、生きていた頃の話をしよう。

 

月明かりに照らされた彼女は魔法の力で水を踊らせ、いつになく楽しげな表情を見せる彼女に見惚れていた彼は、無意識に彼女の元へ足を進める。「…」不思議そうな彼女を見下ろす彼は、それが禁忌と知っていながら接吻を落とした。

 

心の雨があがらないその人を、少し遠くから見ていた。振り切るようにがむしゃらに働くあの人を、高台から見下ろしていた。泣きじゃくる子どもを、隣で見つめていた。「だれ…」泣き腫らしたつぶらな瞳は、空中に浮かぶ私を捉える。「残り香配達人です」指先を杖のようにくるりと回した私は、地に降り立ち微笑んだ。寂しいあなたへ。「残り香は如何ですか」

 

例えば、中身が消え去った宝箱。この年になって漸く、空虚というものの意味を知った。手を伸ばせば、声を出せば届いていたはずなのに、どれだけ探し彷徨っても君はいない。俺の中から君を、この想いを消すには、あと何度殺せばいい。

 

僕を惑わす小悪魔は、今日も天使な笑顔で僕の隣を行く。時折触れる手と手とか、甘ったるい声とか、きっと君は全部わかっているのだ。そう思わなければ勘違いしてしまう僕を支配するのは、胸の奥の甘い痺れと、君が纏うフローラル。

 

独りで大丈夫。もう泣かない。これでも強くなったの。君がいなくても生きていける。知ってるさ。でも、それを受け入れるほど俺は大人じゃない。「取り繕うの得意な癖に、俺に嘘つくのは下手だな」「なあ、」嘘を許すから愛を許して。

 

ようやっと半分くらいまで到達しただろうか…(遠い目)