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拙いわたしの拙いぶろぐ

駄目人間代表が適当に書いた小咄をまとめて載せたり、大好きな戦国夫婦について語るだけ

ついのべログ⑬

ついのべログ

大丈夫って、むずかしい言葉ですよね。

 

嗚呼、泣かないで。溢れる涙が手の甲に落ちる。愛しき貴方を愛しい貴女を、笑顔にしてから逝きたいの。お腹を痛めて産んだあの日、あなた達は弱くて小さな存在だったのに、今ではもう、独りで歩いている。「だからもう、大丈夫よ」私がいなくても、大丈夫。笑顔にするつもりが、更に泣かせてしまった。

 

好きだと伝えられることがどんなに幸せなことだか、きっと貴方は知らないのでしょう。「伝えることで関係が壊れてしまう、相手を傷付けてしまうって思ったことがある?」私は、いつでも其の日が来ることに怯えてる。戸惑う貴方に構う余裕など、私にはもう。「この想いは、告げることさえ許されないの」

 

成就させることはおろか、消化さえできない想いたちは体中を駆け巡り、私の心に根深く居座る。そうだと言うのに貴女は消滅の音を微かに立て、私から遠ざかってゆく。「泣き虫ね」すっかりやせ細った貴女が微笑う。骨と皮だけの手で私の髪を撫で、「死なないよ。あの人と約束したから」と咲うのだった。

 

笑顔を向けられたとき、手と手が触れたとき、手を振ってくれたとき、優しくしてくれたとき、救ってくれたとき、凛々しい顔つきを見せたとき。その声で、呼ばれたとき。数え切れないくらい色んな場面で高鳴る胸が、あなたを好きと叫ぶ。あなたにどうしようもないくらい恋している、と鳴くのです。

 

布団を被っても、目蓋を下ろしても、頭に浮かぶあなた。頭の中を駆け巡る、今日の出来事。耳から離れない、あなたの声。まるで、都合の良い夢を見ているようだった。灯りを消していてもわかる、今も私の頬は赤くなっている。このままでは夜を越えて朝になってしまいそうだ。ドキドキして、眠れない。

 

白百合の咲く野で、ふたり密やかに淡すぎる愛を紡ぎ、誓いの口づけを交わした。私はあれを幸せと言うのだろうと、ずっとそう信じていた。でも、貴方は私の前から姿を消して、それで。あの日と同じように、野に咲く白百合を摘み取る不躾な真似はしない。「ねぇ、」交わした約束を、今も憶えていますか。

 

彼が発案した策に、悔しいながらも乗ずる姿勢を見せれば、彼は「昔、父親や兄から逃げる為に使用した悪知恵の応用だ」と口角を上げる。感心して損した。当たり前に溜め息を吐く。「しょうもなく馬鹿ね」呆れた私にニシシと笑う彼が少年時代と何ら変わらぬように見えて、少し苛立った私は彼を小突いた。

 

花のように可憐で、竹のように靭やかで、私にないもの、全て持っているあの子。あの子のようになりたいと願ったこともあったけど、諦めた。「…だって」何したって敵いやしないんだもん。あんなにも素敵な笑顔で全てを受け入れる君に、敵うわけもない。

 

君が僕を呼ぶ甘美な瞬間。その一瞬で僕は幸せな気持ちになれるのに、きっと君はその事に気付いてすらいないのだろう。君が今日も僕を呼ぶから、僕も君を呼ぶ。君も僕と同じように思ってくれているのかな。そうだといいと思いながら、君の笑顔を抱いた。

 

涙に暮れる女の子を見かねて、僕は彼女の前に姿を現す。宝石みたいな煌めいた涙雫は、僕の姿を見て地面に落ちる。大きく見開いた瞳が美しくて気に入った僕は、彼女の目元に残る涙をそっと拭う。「君の望みを教えてよ」泣いてばかりじゃわからないよ。

 

大丈夫の裏に隠れた思いに気付ける人になりたい。