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拙いわたしの拙いぶろぐ

駄目人間代表が適当に書いた小咄をまとめて載せたり、大好きな戦国夫婦について語るだけ

ついのべログ⑱

ついのべログ

青空も好きだけど、夜空も好き。

 

今日も可愛いな。何を読んでいるのかな。広げたノートはきっと丸っこい字が並んでいるんだろう。机を挟んだ距離から、顔半分を本で隠して、そっと君を見る。目が合った気がして本に視線を戻すといつの間にやら、不意に触れそうなほど近くに、君がいた。

 

いつの日か君は言っていたね。「俺がいなくても生きていけるくらい、強くなれ」と。私は笑って誤魔化したけど、あの時既に君は自分が長くはないことに気づいていたの?「強くなれ」空に唱えてみるけど、私は君がいないと強くなんてなれないの、許して。

 

これ以上踏み込んではならないと知りながら僕は彼女に触れる。今日とてそれは同じだったはずで、噫でも彼女は涙を残しさよならを告げた。刹那鳴り響く警告音は、追うなと、最期の警告だとこちらを睨む。「それでも、僕は」それに抗うように駆け出した。

 

会いたいは切ない。雨空に向かって何気なく呟いた言葉は、私の中で反芻し続ける。噫、私が会いたいと望んでやまないあの子はきっと今、あの人と二人きりで、それで。想像するだけで虚しくなった胸で苦しく呼吸して、私は膝を抱える。「どうして、どうして、どうして」繰り返す声は徐々に、荒くなった。

 

「女の子同士じゃ、結婚できないんだよ」水色のスモック、黄帽子、ツインテール。強い口調で告げられた事実に、幼かった私は衝撃を受け、傷ついた。子供心にずっと一緒にいたいと思っていた彼女と繋ぐ手も解き、滑り台の裏まで逃げ出した私を大丈夫と抱きしめた小さな腕の温もりが、やけに優しかった。

 

汗ばむ首筋に舌を這わせる。塩辛い味を舌先で味わって、唾液と絡ませて体内に取り込む。これで君の汗はあたしの一部。「怖い」腕を抱いて身震いする華奢な(貧相とも言う)少女に、この部屋唯一の灯りを掲げてにこりと笑ってみせた。「あんたいつもそんなこと考えてるの」「やぁね、冗談よじょーだん」

 

いつものように独りで昼食をとろうとした私の前に現れたのは、校内で有名なお嬢様。「一緒にいい?」断る理由はないと頷けば「私もお弁当にしちゃった」コロンとした弁当袋を下げた彼女が照れ笑う。何故、よりによって除け者にされている己に声を掛けたのだろうと疑問に思う私に、微笑みが返ってきた。

 

あなたが遠い。君はたれ目を潤ませて、俺の裾を掴む。愛嬌のある顔が台無しだ、ああでも泣き顔もこれはこれでまた好きかな。ぽとりぽとりと涙を零す君の瞼にそっと口づければ、君は更に涙を溢れさせる。君の杞憂をどうすれば晴らすことができるかな。「そんなに泣かなくても、元より俺は君のものだよ」

 

いつだって一緒。寝る時も遊ぶ時も。双子なのに似てない、なんて言われ慣れたけど、それでも正真正銘、同じ腹で育って同じ日に生まれた姉妹。運命共同体。今までもこれからも、きっとずっと。「そう思っていたのは私だけなのかな」クラスの男の子の隣で見たことない顔で笑う姉に、胸がチクリと痛んだ。

 

嗚呼、すべてわかっていたことだった。彼女が私にとってのヒーローであると同時に、彼女は彼にとってのヒロインであること、なんて。背丈も体格も違う二つの後ろ姿が満開の桜を見上げて、時折視線を絡ませて微笑み合う。見たくなどなかった。今に目を逸らしてしまいたかった。でも、目を離せなかった。

 

満天の星空を見たいな。