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拙いわたしの拙いぶろぐ

駄目人間代表が適当に書いた小咄をまとめて載せたり、大好きな戦国夫婦について語るだけ

ついのべ30

ついのべログ

とうとう三十の大台に!

 

いつだって、君は笑ってた。花のような笑顔を惜しみなく振り撒いて、情け深い心で人に接した。そんな姿に、恋をした。今も君は、笑っていますか。苦しみや哀しみに、打ちひしがれていませんか。高く広い浅葱の空を仰ぐ。何処かで君も、この空を眺めているのだろうか。叶うことならもう一度、君の笑顔を僕に向けてほしい。

 

彼の人を呼び続けて渇いた喉を潤すものは、ここにはない。地下独特の冷気が、手足にはめられた重い枷が、繋がれた太い鎖が、薄汚れた身を支配する。こんな力、要らないのに。今すぐ棄ててしまいたいのに。私が欲しいのは、彼の人との未来だけ、なのに。得体の知れない巨大な力は、じわりと精神を蝕む。(…嫌。あなたの力だけは、絶対に借りない)そして今日も私は、あなたを呼ぶ。ぜんしろうさま、たすけて。

 

僕の中で占める君の割合は如何程か。突然思ったことに、長い間考え込んでいた。勿論十割中一割なんてとんでもないし、だからと言って十割中十割は嘘になる。「うーん」「何を考え込んでいるんですか」くすくすと笑う君を膝の上に誘い、その体を抱き締める。細っこいのに柔らかくて、心が落ち着く。ああ、そうか。「小さなことだよ」君の存在は、割合なんかじゃ表せないのだ。

 

私に秘められていた、とてつもない力。きっとこれは、この世にあってはならない。人目に知れれば、人々が喉から手を出して欲しがるだろう。どんな手を使ってでも、この力を持つ私を奪おうとするだろう。私が家を頼れば、城を頼れば、きっと大事な場所は壊されてしまう。世の誰もが私の敵になったとしても。あなたはそれでも私を愛してくれますか?

 

うへえ、と珍しく顔をしかめたすずに才介が不思議に思えば、すずは舌を出す。「何これ。飴?」ピンク色の舌に乗っている小振りの半透明な球体。これが彼女の表情を崩させたのか。「はっかのドロップ。苦手で避けてたら、こればっかり残っちゃって、捨てるのも勿体ないから挑戦してみたんだけど…やっぱり苦手」「じゃあ俺が貰うよ」「えっ、いいの」喜色を示すすずが差し出したドロップ缶から一粒取り出した飴を、口に放る。苦いような、爽快感のあるような、でもどこか甘い、独特の味。はっかの味は、まるで君。心配げにこちらを見つめるすずに、才介は微笑んだ。

 

すき、きらい、すき。気晴らしに登った小山で目についた、茎からぽっきりと折れた撫子の花で、すずは子どもの頃に流行ったような花占いをしていた。幸か不幸か、撫子の花弁は片手で数えるほどしかないので、すぐに全てちぎってしまう。「…すき、かぁ」はあ、と大きく溜め息を吐いたすずの頭に浮かぶのは、一人の青年だけ。「…苦手、だったのにな」どうしてこんなことになってしまったのだろう。さっきよりも深い溜め息が、山に溶けていった。

 

日夜研究と臨床実験に追われる二人の、癒しと言えば。「あ〜、マミちゃん本当可愛い♡この世に舞い降りた天使!」 三十路を迎えたらしい先輩女性医師は、パステルブルーの携帯ゲーム機を抱きしめる。「馬鹿言わないで下さい、天使は俺のナナコです」「え?いつの間にナナコちゃんは如月くんのものになったのかな??」ほら、と見せたゲーム機の液晶には兵助に骨抜きなナナコがいる。「嘘でしょ…この短時間で攻略しちゃったの…?!」口元を押さえて大袈裟なリアクションをとるすずに、才介は嫌味なほど爽やかな笑顔で豆乳ラテを口に運ぶ。「でも、本当残念よねぇ、如月くんって」悔しげな表情を一瞬にして変えたすずの呟きは、才介の眉間に皺を作る。「頭良し顔良しで高学歴高収入なのに、ギャルゲー好きだなんて、モテないでしょ」まあ、私が言えたことじゃないんだけどね。笑うすずに才介は、彼女にとってとんでもない爆弾を落とすことを選んだ。「じゃあ、俺の趣味を理解してくれる柊先生が付き合ってくれれば万事解決ですね」

 

低すぎなくて高すぎない、爽やかすぎず渋すぎない、大好きな声。毎日のようにその声を聞いていると、幼い頃の高い声を忘れてしまった。「…それでその時、九平次と紅が雪だるまを作っていて、」夢中で愉しい出来事を話す彼の声が、耳の奥深くで疼く。暫く、呼ばれていない。呼ばれたい。その声で、呼んで欲しい。すずは才介の袖を引いて、視線を合わせた。「ねえ、名前を呼んで」

 

甘えるということが、元来苦手なのだろう。それは長女ある故か、それとも性格の問題か。兎も角、すずが自ら甘えてくることなど、殆ど無かった。然し。昼下がりの図書室。調べ物をしていた才介の隣に座ってきたすずは、閲覧机に置かれた才介の手に己の手を重ね、軽く握ってみてはすぐ離す。「…」不思議に思った才介が本から顔をあげると、すずは上目遣いでこちらを見遣っていた。何だこれは、何だこの甘えた仕草は。頭が沸騰しそうになるほど血が沸き立った。

 

恋仲になる、ということはつまるところ、触れ合うこともあるということで。距離を詰められた凪は、変な空気に呑まれそうになってぎゅっと目を瞑る。怖い。でも、違う。目を開ければ栗色の瞳が惑っていて、凪は少し悔やむ。違うの。こんな顔させたいわけじゃない。ただちょっと、未知の世界が怖かった、だけ。ぽつぽつと零された本音に、彼は微笑む。「触れてもいいか」優しげな声に、凪は小さく頷いた。

 

片付け疲れた〜(o´Д`)