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拙いわたしの拙いぶろぐ

駄目人間代表が適当に書いた小咄をまとめて載せたり、大好きな戦国夫婦について語るだけ

ついのべ37

ついのべログ

花粉症がつらい最近です_:(´◇` 」∠ ):_

 

ひとり、いつものように訪れた彼を、ピークが過ぎた店内で仕事をしながら見ていた。彼は何もかもが私とは正反対で、だから私は彼が苦手で。人の機微には人一倍敏感なはずの私ですら、彼が何を考えているのかわからない。断じて、知りたいとかではない。そのはず、と何かに言い訳してしまうのは、なぜ。

 

いつまでも交わらない捻れの関係のように、人の心と心は全く違うものであるのだろうか。「それは違うんじゃないかな」「どうして?」「だってそれは即ち、人の心と心が重なることはないということで…仮にそうだとしたら、友情や愛情が続くことは有り得ないし、恋が実ることだってないだろう」成程。善四郎の見解は花の腑に落ちる。「じゃあ、今わたしがしたいことと善四郎さまがしたいこと、同じだったりするのかしら」「どうだろうね」珍しく不敵に笑う善四郎に、花は少しずつ近寄る。わたしはね、あなたを抱き締めて、額と額を合わせて、笑い合いたいな。

 

あなたの名を呼ぶ為に生まれてきたのかもしれないと、本気で思ってしまう。他人に話しても、馬鹿らしいと一蹴され嘲笑われるだけだろう。でも、喉が擦り切れて血が滲んでも、きっとわたしはあなたの名前を呼ぶのだと言い切れる。あなたを愛しいと思えば、名前までもが愛しく思えて。これが恋の力、なのかしら?

 

音程が外れに外れた鼻歌は、普通なら不協和音に感じるはずだというのに、僕にとっては心地好い音色に感じた。あの鼻歌を耳にするだけで、今日も平和だと思えた。「…あーすをすーきみーてー」今の僕が歌う唄は、君が歌っていたものと同じはずなのに、やはり何か違う。「どこにいるの、花ちゃん」この声が届いたら、また、あの歌を聴かせてよ。それを頼りに、必ず見つけ出すから。

 

離れられなくて傷付け合う僕らは、なんて歪なのだろう。歪んでしまった愛は壊れそうで、君も僕も身も心もボロボロで。それでも愛することをやめられない。 「どうして、こうなったんだろうね」貪るように眠る、あの頃の純真さを失った君の頭を撫でる。本当は、わかってる。あいつらを失ったせいで、僕が君に執着してしまっているのだと。僕が、壊れてしまっているのだと。それでも側に居てくれる君を、壊すまで愛さずにはいられなくなってしまったのだと。

 

委員会の後、終わらなかった分の作業を終わらせ資料室から出れば、第三校舎という場所ゆえに人気のない廊下の隅に蹲っている後輩を見つけた。どうやら泣いている様子で、大丈夫かと問えば彼女は小さく頷く。「でも、ここにいて…ください」俯いたまま呟かれた、思いもよらない言葉。「俺でいいの」「先輩が、いい」もしかして、ここに来た理由は。

 

高校時代の初めての恋は、結局何も動きがないまま儚く散ってしまった。その後、何人かとお付き合いを試みたものの、結局はあの人と比べてしまい、最終的に自分から終わりを告げた。「久しぶり」親友の結婚式。確か海外に転勤したと聞いていたはずなのに、彼はそこにいた。「ひ、久しぶり…」上擦る声に恥ずかしさを覚え、すずは顔が赤くなるのを感じる。「元気そうで、安心した」しかし彼はそれに気付いていないのか、昔と同じように話し掛けてきた。「う、うん、元気元気…」「…柊」突然真剣な表情で見つめてくる彼に、すずは言葉を失う。ちょっと待って。だって、今は大好きな人達の式の最中で―。「俺、高校のとき、お前のこと好きだったよ」鐘の音と共に何かが始まる音がしたのは、気のせいですか?

 

上品な紫が綺麗なアイリスの花束を差し出して、彼は珍しいほど緊張した様子で口を開いた。「俺と、一緒になってください」懇願するような台詞も、彼が口にすると何だか決定事項のようで、つい笑ってしまいそうになる。「私で良ければ」応えた私に、すずじゃないとだめだ、と呟くものだから、今度こそ笑いを零してしまう。アイリス、花言葉は『あなたを大切にします』『良き便り』。きっと、一生懸命調べて、選んでくれたのだろう。この花束と共に、貴方の想いも抱えましょう。

 

あいさつの「あ」すら知らなかった幼いあの頃の記憶など、誰もが殆ど持っていないはずだ。才介だって例外でなく、まだ福寿丸と呼ばれていた頃のことは何も憶えていない。だけど。小さな柔らかい手のひらが、頬を撫でる感覚。同じくらいの年頃だろうか、幼い女の子がにこにこと才介を見る記憶。それだけは確かに残っていた。あれは、いったい。

 

夕焼けの下、三年間の登下校で渡り慣れた橋の上で交わした約束を、君はまだ覚えていますか。“七年後、まだ想ってくれていたなら、三月の初めの満月の夜、ここに”卒業を目前に控えた日のことだった。君は私を連れ出し、そう言った。君が妙に晴々とした顔をしていたから、私は文句を言うことも、泣くことさえも出来なかった。だから十年後、来るつもりなんてなかった。正直言って、腹いせのつもりだった。酷い君に囚われ続けてなんてあげない。そう思っていたのに、なんで私はここにいるのだろう。橋の上から川を眺め、溜め息をつく。結局この十年、私は親から勧められた見合いの話も断り、細々と仕事をこなし生きてきた。君のことを思い出す暇なんてなかったと言えば嘘になるが、もう一人でも生きていけると確信していた。でも。肩を叩く骨ばった手に、懐かしさが溢れる。「待たせてごめん」低い声に、愛しさがこみ上げる。今、あの時の分まで泣いて、困らせてしまおう。腹いせはそれで、十分だろう。

 

缶のお汁粉が冷蔵庫に溜まっているので、温めて飲んじゃいます(´ڡ`♡)