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拙いわたしの拙いぶろぐ

駄目人間代表が適当に書いた小咄をまとめて載せたり、大好きな戦国夫婦について語るだけ

ついのべ39

ついのべログ

やっと治ったと思ったら、もう年の瀬( °_° )

 

結婚は家と家の結びつき。そう教わった娘は、自ら望んだ唯一と夫婦となる。「我儘だったでしょうか」ふと思ったことを口にすれば、彼は「今更だね」と可笑しそうに笑う。「いいじゃないか、我儘で。貫き通せたのだから」手に手を取った彼曰く、結婚とは生涯を共にする誓いらしい。‬

 

「なんだか嬉しそう」顔が緩んでる、と頬を指でつつかれた。慌てて取り繕うと、うふふ、と笑いを零される。「そういうお前も楽しそうだよ」「才介さんが面白いから」「別に面白いことはしてないけど」至極真面目に返せば、再びすずは笑う。「そういうところが面白いんですよ」「どういう意味だ」彼女の言っている意味が、全くもって理解出来ず、首を傾ける。ああでも。「すずがいるから、俺は幸せだよ」思ったままを告げれば、すずは顔を伏せて、そういうとこ狡い、と力なく呟いた。

 

出掛け先から帰ったらしい才介が、すずを見つけるなり凄い勢いで向かってきた。「さ、才介さん?」と思えば、ばたりと倒れ込んでくる才介を、すずは両腕でどうにか支える。その体はどう考えても平時より熱を持っていて、ぎょっとしたすずは共にいた蘭に助けを求め、慌てて彼を医師の元へ運んだ。「熱で朦朧としてたのに、すずさまのところにくるなんて、まるで帰巣本能ですね」熱に魘される才介を眺め、蘭が呟く。それに苦笑し、すずは才介が放さない手に弱く力を込めた。

 

辛い時こそ側にいたいと願うのに、彼女はそれを許してはくれない。苦しい時、彼女は誰の目もないところで、独り声を殺して泣くのだ。泣き顔を見せることはけしてない。「俺は不器用だから、お前の辛さや苦しさを、本当の意味で理解することは出来ないかもしれない」こちらを向こうとしないすずに、才介は語りかける。「でも、何も出来ないのは心苦しい」お願いだからこんなときこそ、背中、向けないで。

 

「閉、店…ですっ」寄ってくる顔を掌で押し退ける。押し潰された端正な顔は、不服そうにこちらを見ていた。「閉店って、なに」「こういう時間はお終い。ほら、もう夕餉の時間ですよ」延長は、と尋ねてくる彼に、時間外営業はしておりません、と突っぱねる。それでも私の隙を覚えた彼は、それを上手く狙い、首筋に舌を這わした。

 

人を好きになるのは、お互いに二度目のことだった。恋仲という関係を築くのは、お互いに初めてのことだった。勿論、こんな風に視界を奪われることも、唇を重ねること、も。(あ…睫毛、長い、いいな)緊張の度が過ぎたすずは、ぼうっとそんなどうでもいいことを思う。「…目、閉じて」やりにくそうにすずを見る才介も、見るからに緊張している。一緒、だ。すずは安堵し、そっと瞼を閉じた。

 

馬鹿みたい。口の中で呟く。自分で決めていたことなのに。初めからそういう約束だったのに。今更、美しい想い出にしたくない、なんて。夢幻に浸っていたい、なんて。「最後の、お願い」ずっと好きだと、言って。離れていても愛していると、誓って。生涯私だけを想い続けると、嘯いて。―最後の時まで、抱きしめて騙して。

 

温かくて無邪気だった箱庭は、今はもうあの場所にないという。皮肉にも彼らの手で無くなってしまったあの場所は、やはり彼らの手助けにより、違う場所へと移された。もうあの場所には、私達が愛しい日々を過ごした確たる証はない。ならば、今はただ思い出だけを、大事に箱に詰めて、この胸に秘めよう。

 

おまえに日陰は似合わない。そう言いのけた音哉を、凪は涙を浮かべた目で睨む。「私だって、日陰にいたい時もあるの」いつも強気で通している自分の柄ではないことくらい、わかっている。でも人並みに、独りで泣きたい時だってあるのだ。「泣くならもっと、明るい見つけやすいところで泣けっての。こんなじめじめしたところじゃ、見つけにくいだろうが」それは、慰めるということだろうか。真顔で言う音哉の耳が赤いことに気付いて、凪は沈んだ気持ちも忘れ、笑いを零した。

 

元来、負けることは嫌いだった。相手が例え男であれ、関係ない。だから、初めて負けたあいつが兎に角気に食わなかった。周りになんやかんやと持て囃されても飄々としている、あいつ。追い付きたくて、追い越したくて、ずっと先を行くその背を追い掛けてきた。目が覚めた私の頭には包帯が巻かれていて、傍らであいつの姉である椿さんが口元を押さえて涙を堪えていた。「凪ちゃん...」飛び込んでくる、椿さんを抱きとめる。噫、嫌な予感。「音哉が―」追い掛け続けた背中が、消えた。

 

体重の減りが停滞中…(´△`)