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拙いわたしの拙いぶろぐ

駄目人間代表が適当に書いた小咄をまとめて載せたり、大好きな戦国夫婦について語るだけ

ついのべ40

ついのべログ

これが、今年の納めになると思います。

 

いつものように凪と喧嘩して、泣かせてしまった。あれから凪は目すら合わせやしない。「何なんだあいつは」おっかない癖して、ちょっとやそっとのことで傷付くなんて、繊細な女子か。音哉は自室で寝転がって呟く。そんな音哉を見て、姉は溜息をついた。「よくそんな言葉を言えたもんね」いつもは温厚な姉の、滅多に見ない蔑みの視線に、音哉は顔を硬直させる。「凪ちゃんだって女子よ。それも、他の子よりずっと傷付きやすい」おまえが一番知ってるはずでしょう。姉は言う。「...ちょっと出てくる」「はいはい、いってらっしゃい」ちゃんと謝るのよ、と投げ掛けられた言葉に音哉は、敵わないなと苦笑を零した。

 

例えば、眠る彼の唇に軽く口付けてみたりとか、顎をくいっと引かれて口付けられたりとか。どんな状況でも構わないから、兎に角「口吸いしてよ」なんて、直接的且つ簡潔に言えればいいのだけど、天邪鬼な自分がそんなことを言えるわけもなく。「はあ...」文机に突っ伏して溜め息を吐く。素直になればいいだけのこと、なのに。どうしてこうも、あいつに対して素直になれないのだろう。凪の憂鬱は、もう少しの間続きそうである。

 

お前がどうしようもなく意地っ張りで強がりで、本当は誰より脆いこと、分かってはいる。「ほんと、やめて」切れ切れに出された声は、拒絶のはずなのに、弱々しい。無理矢理胸に抱いた体は小さく細く、この体の何処からあんな力が出るのだろうかと不思議になる。「やめない」「やだ、いやよ、わたし、」弱くなってしまう。そう言いたげな凪を抱く力を、少しだけ強めた。

 

照りつけるような日差しを浴びる凪は、頬を赤くし、ぐったりとした様子を見せていた。音哉は、それでも作業を止めようとしない凪の腕を掴む。「何、すんの、よ」抗議の声もいつもより幾分弱々しく、音哉は眉間に皺を寄せる。「来い」「はぁ?...ちょ、っと」荒々しく腕を引き歩き出す音哉に、凪は足を絡ませそうになりながら付いていく。木の下に辿り着くと音哉は足を止め、木の幹に凪の背を預けさせた。「お前なぁ、具合悪いなら早く言えよ」水を渡してくる音哉に、凪は何故だか悔しさを感じる。何でコイツは、弱ってる時に限ってよく気が付くのだろう。水を受け取った凪は俯き、そして驚く程の小声で呟いた。「...ありがと」

 

擦った赤い目を伏し目がちにして、凪は小さな口を開く。「...落ちそうになる、じゃない...」真っ赤に染め上がっている頬が、色白ゆえに目立つ。「...落ちてくれよ、深みに嵌って出て来れないくらい」その顔を手で支え上を向かせ、紅潮した頬を親指の腹で触れる。そうか、これが「愛しい」か。「なあ、」たくさんの『初めて』を、俺ならあげられる。

 

どこまでも続く長い道を、ただただ眺める。聡いはずのこの目は、どうやら知らぬ間にくすんでしまっていたようで、道の先が霞んで見える。「どこに行ってしまったんだろう」音哉は呟く。いつも背筋が伸びていた細い背中は、ここには影すらない。本当に彼女はこの道を行ったのだろうかと、疑いたくなる。「...会いたい」今すぐに。

 

ロウソク一つで読書する凪の隣で、音哉が欠伸を噛んだ。眠い、と呟いた彼に視線を向ければ、彼は隙を見つけたとばかりに凪を奪う。思わず身構えた凪の心臓は、バクバクと鳴り出す。「…なーに緊張してんだ」それに気付いたのか、音哉は凪を押し倒した状態のまま、クツクツと笑い、額を重ねた。

 

掴みどころのない彼のことも、数年の月日を共にすれば、随分わかってきた気がしていた。音曲と酸っぱいものと子どもが好きで、それから実は誰より家族を大事に思っていたりして。ああでも、こんな表情、知らない。凪を見つめる音哉は、ゆるりと微笑んでいる。まるで、愛しいものでも見るような目。「ごめんやっぱり、あんたのことよくわからないわ」慣れない熱に浮かされ呟いた凪に、音哉は声を上げて笑った。

 

嗚呼、そろそろ武力行使に及ぼうか。目の前で喋りくさって私の腕を掴んで離さない男に、視線を鋭くする。無辜の民を痛みつけるのは少々しのびないけれど、バレなければいいわよね。胸中で頷いた途端、私の背は、ぐっと強く引き寄せられた胸に収まる。「行くぞ」「え、あ、うん」驚きで解放された私の腕の先を奪うと、音哉は歩き出す。「なっ、何なんだよお前」背から聞こえる苛立ちの叫びに、振り返って音哉は気だるげに答えた。「恋人ですけど、何か」

 

まるで蜘蛛の巣に囚われたように、絡まった糸で雁字搦めにされていたように、俺達は背中を合わせ永い刻を過ごしてきた。おまえは憎まれ口ばかり叩いていた俺をただただ愛してくれる。何もかもを投げ打って棄てて、俺を選んだおまえにはきっとこれから先も敵わない。「だから、もういいんだ」俺は、おたえのおかげで十分に幸せだった。さあ、おまえを俺から解放しよう。“さようなら、愛した人(ありがとう、愛してる)”

 

今年もお疲れ様でした(。・∀・。)ノ

2017年が皆様にとって、素敵な一年でありますように…