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拙いわたしの拙いぶろぐ

駄目人間代表が適当に書いた小咄をまとめて載せたり、大好きな戦国夫婦について語るだけ

浴衣とかもう随分着てない

創作SS

季節感ないとか言っちゃダメ。

花と凪で、現パロです。

。゜⋆。゜⋆

よし、できた。
背から掛けられた声に、花はゆっくりと振り向く。
そこには、満足げな表情で花を見つめる凪がいた。
「ありがとう、凪さん」
袖口を掴んだ腕を持ち上げて揺らす花に、凪は可笑しそうに笑いを零す。
白地に色とりどりのシャボンが浮かぶ浴衣は、凪が花にピッタリだと選んだものだ。
浴衣に合わせて買った、淡い水色の帯とパステルピンクの兵児帯が少女らしいあどけなさを演出する。
「やっぱり思った通り。似合ってる」
一方、先に着付けていた凪は、トリコロールの上に散らばる大小の毱が可愛らしい浴衣に、花と同じ淡い水色の帯を合わせていた。
三つの花の帯飾りがついた帯留めは帯を邪魔することなく、纏まっている。
「着付け、してあげようか」
幼い頃から剣道を嗜んでいて和服に慣れ親しんでいる凪は、浴衣の着付けも容易にこなすようで、祭りに行くことが決まったその日、浴衣を着たいと呟いた花に着付けを申し出てくれた。
「いいの」
目を輝かせた花に少々引きながら、凪は簡単に「うん」と頷く。
「藍川に見せたいんでしょ」
「えっ、あっ、…うん」
思わぬ凪の言葉に頬を赤らめた花は、両手を絡めてそれを認めた。
バレバレだったか。
まだ出会って数ヶ月だというのに、初対面からなぜだか気が合うこの先輩に、隠しごとなど一度も出来た試しがない。
もとより、隠しごとをするつもりもないのだけれど。
「あー、もう。私も恋したい」
深く溜め息をしたかと思えばそう吐き捨てた凪を前に、花は大切な幼馴染みを想う。
物心ついた時から今までずっと側にいてくれた、一つ年上の、二人の男の子。
一人は飄々としていて陽気な性格、もう一人は心優しく温厚な性格をしていた。
いつだって自分を護ってくれた二人を大切に思うのは自然の性で、花は周りにとやかく言われようと、いつでも二人と共にした。
だって、家族のようなものなのだ。
一緒にいて何が悪い。
ああけれどそのうち花は、不思議なことに恋愛感情なんてものを向けるようになってしまった。
勿論、両方にではなく、二人のうちの一人にだけ。
花は自分の恋心に気づいたとき、真っ先に自分を変だと思った。
だって、おかしいではないか。
自分は二人を平等に大好きでいたはずで、そもそも恋やら愛やらなぞ無関係な感情を抱いていたはずなのに。
しかし、そんな花の思いなど知るかとばかりに、恋心は膨らんでいった。
そう、今では友人にまで見透かされるほどに、それは大きく。
浴衣姿が映える凪の姿を見ていたら、弾んでいた気持ちが突然小さく萎んでしまって、花は唇をきゅっと結ぶ。
「なんて顔してるの」
それに気づいた凪は、花の前髪を軽く撫でる。
「今日、勝負するって決めたんでしょ」
「…うん」
こくりと頷く花を勇気づけるように、凪が手を握る。
「大丈夫よ。あんたは私と違って、素直でかわいいから」
自虐してまで自分を鼓舞する凪の手の温もりに甘えてしまいそうで、花は繋ぐ手にぎゅっと力を入れる。
恋愛は一人ではできない。
でも、気持ちを伝えるのは、自分の力でしなければ意味がない。
「ほら、もうこんな時間。さ、行きましょ」
ありがとう。
そう呟いた花の手を、なんてことはないわと凪は笑って引いた。