読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

拙いわたしの拙いぶろぐ

駄目人間代表が適当に書いた小咄をまとめて載せたり、大好きな戦国夫婦について語るだけ

この人あんまり詳しくないから許して

創作SS

おはようございます。

今日は羽州の狐・最上義光の小話をお送りします。

即席ですので悪しからず。

………………

お駒、おお、お駒。

命より大事とした愛しい娘を卑しい老獪によって奪われた妻の、嗚咽混じりの泣き声が耳から離れない。

世の情に絶望し自ら命を絶った妻の、流した血の匂いが今もまだ鼻から抜けない。

「申し上げます」

風のように現れた透破が、些か焦燥を浮かべ述べた。

まだ九月とはいえ、この東北は肌寒い。

「石田治部率いる敵軍、関ヶ原の地にて徳川内府さまに敗れたり」

嗚呼、やっとか。

待ち望んでいた報せを受け、義光はそっと目蓋を閉じる。

あの忘れもしない地獄の日から五年。

やっと娘の、妻の無念が晴らされる。

「父上さま」

止むを得ず京の地に出すことになった姫は生まれ育った羽州を発つ前夜、己の無念と別れを惜しむ義光の手を取った。

父を捉える双眸は、思っていたよりも毅然としている。

「心配なさいますな。駒は最上のことを一番に考え、必ず父上のお役に立ってみせます」

凛とした口調でそう言い切った姫がいつにも増して美しく、そして心強く思え、易々と関白の元へ行かせてしまった己の不甲斐無さを許すことは、きっと死を迎え生まれ変わったとしてもできないだろう。

「お屋形さま」

慌てた家臣の声に現世へ戻された意識が、戦独特の空気で澄んでいく。

「敵軍が退いている様子」

やはり己は、腐っても乱世を生きた武士なのだ。

愛する娘と妻を立て続けに喪ったひとりの男は震え上がる闘志を野放しに立ち上がると、腹の底から声を上げた。

「怯むな」

「我等は羽州の名家、最上家ぞ」

娘よ、妻よ。

義光は采配を振るう。

これが儂が出来る唯一の、そなたらへの弔いじゃ。

家臣の制止を振り切り自ら先頭に立って敵に追いすがった義光はその日、兜に被弾しながらも果敢に戦ったと、現代まで語り継がれている。