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拙いわたしの拙いぶろぐ

駄目人間代表が適当に書いた小咄をまとめて載せたり、大好きな戦国夫婦について語るだけ

ついのべ46

ついのべログ

ベビーパウダーをぱたぱた叩く朝と夜。

 

それは嘘だと聞いたって本音はいつも君の中から零れ出ていて、気づいてしまう僕の身を縛りつける。嘘をつくのが下手で本音を仕舞うのも下手な君を、それでも愛してしまうのは僕の弱さゆえか。今日もまた、嘘を紡ぐその口を塞ぐ、塞ぐ。内側で泣く君に気づいても、僕は身を縛る痛みに喘ぐしかできない。

 

君を支配するものなら、痛みさえ奪おうか。前髪を払って表れた額に手先でそっと触れる。白い額とは対照的に赤らんでいる頬から熱気が出ている気がするのは、決して風邪をこじらせたからだけではないのだろう。いつもは己を睨む目も今は熱に浮かされとろんとしていて、怠さに負け閉じた目蓋に口づけた。

 

「あなたが運命の人ならよかったのに」指先を弱々しく握る真白い手が、去る己を引き留めるように呟く。「…そうだな」返すべき言葉も見つからず、静かに頷く己に、彼女はどこか苦しそうに微笑む。「あなたのそういうところ、狡いわ」伝わっていた体温は僅かな温もりを指先に残したまま、離れていった。

 

君の傷すら肩代わりできたらと、二の腕の深い傷にそっと口づける。やめてくれと恥ずかしそうに抗議する君は顔を片手で覆っていて、けれど紅く染まった耳は見えている。傷は男の勲章だと、武士の名誉だと君は常日頃言うけれど、それでも私は君が一つでも傷を負って帰ってきたら、泣きそうになるんだよ。

 

男の人だというのにわたがしのような笑顔を浮かべるあなたは、まるで割れ物を扱うようにわたしに触れる。わたしの身を伝う指は絹のように滑らかで、わたしを見つめるその瞳は一見柔らかなようでいて、実は紅い熱が帯びている。嗚呼、身を焦がすほど愛すあなたに囚われたわたしは、やさしさの檻のなか。

 

肩口に顔を埋めた彼女がぐりぐりと頭を押し付けてくる。痛いと文句を言えば、彼女は機嫌を損ねた様子で更に強く押し付ける。こういうときは大抵、甘えるのが下手な彼女が甘えたいとき。頭に染み込んでいる感覚に従いよしよしと頭を撫でると、首元で彼女は一言、「したい」恥じらいが見える声で呟いた。

 

ずっと、それこそ母を取られたときからたったひとりきりだから、辛さなど、寂しさなど、そんな感情たちはもう忘れてしまった。そう思っていた。でも、それは錯覚なのだと彼女は陽だまりで振り返り微笑う。「感情のない人間なんて、きっと世界中どこを探してもいないよ」だって腐っても人間なんだもの。

 

遠く青い日、楠の並木道、射し込む陽に煌めく貴方、黒い襟詰と紺のセーラー。あの頃は色づいていたはずの、セピア色に染まる記憶を思い出す日は決まってアンニュイな気分で、ベッドの上に転がった私を猫が咎める。にゃあ、わかってるってば。言語の違う一人と一匹しかいない部屋もセピア色に染まった。

 

今すぐ会いたいよ、開けっ放しの窓、風で揺れるカーテンから覗く月に囁く声は自分でも驚くほどに不安定だった。どうやら人一倍弱いらしい私は、嫌なことがあったときに君に慰めてもらえない哀しさだけで、胸が切り裂けそうに痛んでしまう。強く、なりたいな。君に依存しないで生きてゆけるくらい、強く。

 

別に寂しくはなくて、だけど温もりを覚えたこの胸にはぽっかりと穴が空いているようで、この辺りが寒い。北風に吹かれ靡くスカートが、タイツを履いた脚を軽く晒す。風の音が私を嘲笑う声に聞こえるのは、被害妄想だろうか。ねえ、はやくこないと、ちっとも悲しくなんてないのに、泣いちゃいそうだよ。

 

今日も日課のフラフープします!