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拙いわたしの拙いぶろぐ

駄目人間代表が適当に書いた小咄をまとめて載せたり、大好きな戦国夫婦について語るだけ

朝、誰よりはやく

創作SS

うちのメインキャラ、花と善四郎の軸話の冒頭だけ載せちゃいます。

このふたりはできるだけ「周りが応援したくなる、ほんわかカップル」になるよう心がけてます…が、なかなか難しい(^▽^;)

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あれは、そう遠くはない夏の日のことだった。
馬を走らせる善四郎の背に掴まって、拓けてくる景色に息を呑んだ花を待っていたのは初めて目にする海というもので、着いた浜辺に手を貸され降り立つ。
初めての浜辺は熱くて、けれど足に馴染む砂の感触がくすぐったくて、花は年甲斐もなくはしゃぎ声を上げた。
「善四郎さま、浜辺って柔らかいんですね」
「そうだね」
「波打ち際まで行きたいです」
「うん、行こう」
爛々とする花に相槌を打つ善四郎はいつになく優しく微笑んでいて、それに気づいた花は少しだけ口数を減らす。
「急に大人しくなって、どうしたんだい」
手を繋いで波打ち際を歩く中、そんな花をおかしく思ったらしい善四郎は首を傾げる。
「あ、えっと…。ち、違うんです」
「何が」
ふるふると胸元で手を振る花は、問い返してくる善四郎に観念して小さく口を開いた。
寄せては返す波の音が、ざわざわと煩い胸の音を掻き消す。
「…なぜ、でしょう。善四郎さまが、遠く感じてしまって」
「遠く」
確認するように復唱する善四郎へ、胸を押さえてこくりと頷く。
「善四郎さまは優しいです。それはいつも感じています。でも、時折その優しさが怖くなってしまうんです」
見つめてくる瞳の色が眩しさでわからなくなって、花は上手に息ができなくなる。
「これで最後なんじゃないかって、思ってしまうんです」
ぎゅっと締まったような痛みを左胸に感じた花が静かに零した息を、彼は知っただろうか。
今となってはもう、知る由もないけれど。
波の音は休むことも知らず、ひと時も止まずに二人の間を駆け抜ける。
繋ぐ手があたたかいことでしか、隣に善四郎がいることを確かめる術のない己が不甲斐なく感じて、花はその手に力を込める。
「最後じゃないなんて言えないけど、」
汗ばむ額が夏の太陽を嫌がるようで、光の先を仰ごうとした花を刹那、善四郎の唇が遮った。
「いつ最後が訪れるかなんて、僕にもわからないけど、でも」
覚束ない言葉とは対照的に、その性格をよく表しているように思える双眸は花を射抜いて離さない。
「僕はこれから永い永いときを、君と共にしたいといつだって思っているよ」
そのために一緒になったのだから。
善四郎は繋いだ手を挙げると、目を丸くしたままの花に笑い掛けて花の手の甲に口づけた。
その口づけの意味も理由も、今でもわからないけれど。
「やがてくるその日までは、そばにいようよ」
あなたの声が、私の中にまだ木霊しているのです。

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どうでもいいけど、この題名気に入ってるの!