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拙いわたしの拙いぶろぐ

駄目人間代表が適当に書いた小咄をまとめて載せたり、大好きな戦国夫婦について語るだけ

ついのべ52

ついのべログ

いつもはあまりお米は食べないのですが、五目ごはんが美味しくて、いつもの倍は食べました(๑>؂<๑)

 

どうしてかな、何よりも大切だと思っていたはずなのに。悲しみの色をした瞳で僕を見つめる君に、物哀しげに微笑んだ。「思い出せないんだ、君のこと」僕のその一言は君にとってきっとどんな爆弾より熾烈で、君の瞼に深い哀愁がこもる。「仕様がないです」無理して笑う姿を見るのが、痛くて仕様がない。

 

赤白黄色。色とりどりの花が咲く野を小走りで駆ける君の、くるくる変わる表情を見ていた。幼子のように無邪気な君がどうにも愛しくて思わず笑みを零せば、それに気づいた君は言う。「貴方の笑顔が大好き」「だからね、あなたの笑顔を見ると、貴方と出逢えて良かったと思うの」それはこっちの台詞だよ。

 

名は体を表すというけれど、それを誰より体現しているのはきっとあの子の他にはない。そう思えるほどにあの子は愛らしく咲き誇っていた。私の名を紡ぐあの子に向けるべきは微笑みただ一つで、隣で呆れている人にはわからないだろうけど、と本音を零す。「あの子の幸せ、それが私の幸せでもあるんです」

 

天邪鬼、あいつは私をそう言うけれど、あいつだって負けず劣らず天邪鬼だと思う。潮風に吹かれた身体をぐんと伸ばし、待つあいつの元へ足を向ける。迎えたあいつは涙の跡が残る私に手ぬぐいを差し出す。素直に有難うすら言い合えない私達だからたぶんきっと。(好き、だなんて一生言えないのでしょう)

 

忙しい合間を縫って見舞ってくれる貴方が、私の手を包む両手があたたかくて、どうしようもなく泣きたくなる。きっともう少しで、私はこの温もりを忘れてしまう。哀しむ貴方を置いていってしまう。だから最期に嘘をつくの。「私のこと、忘れていいんですよ」ねえ気づいて。本当は、忘れないでほしいの。

 

噫、これがほんに最期の最後だというのなら、泣き虫な君に贈る言葉は一つしかないと君の濡れた頬に手を伸ばす。指先で触れた先の瞳は幼きあの頃と変わらぬ色をしていて、海のようだと思う。波を立てる瞳よ、どうか君の名のように凪いでくれ。頬を撫ず手に泣く君へ、一度しか言わないよ。「幸せだった」

 

「この人生で、おまえに逢えて良かった」なんてそんな台詞は、奥方に言いなよね。最後まで何も出来なかった私には、勿体ない言葉。縛られることを何より嫌った私が家に囚われることを選んでそのまま月日は経って、去る背を追いかけることはもう既に許されない。だけど最後に一つだけ。「好きだったよ」

 

誓った日のことを、今でもはっきりと憶えている。陽の光が注ぐガラス張りの教会で、美しく輝いていた君の姿も。「僕に愛することを教えてくれて、ありがとう」触れ合う手と手、違う温度、甲を弾く雫。泣きながら笑う君はあの日と同じくらい綺麗で、きっとすぐに訪れるその時を思い、胸が苦しくなった。

 

哀しみの象徴が止まらない私を見兼ねて、彼は溜息を零す。でもその溜息すら聞けなくなる未来がそう遠くはないのだと気づいて、私はまた溢れる。「泣かないでくれ、笑ってくれ。最後のお願いだから」指の腹で私を拭って彼が言う。最後なんて言わないでとは言えず、彼が望む通りにきゅっと口角を上げた。

 

最後にするわ。もう二度と此処にはこない。決して強くはない私の決心を、貴方は笑うかしら。幼い頃からの癖、貴方に寄りかかってしまう、そう貴方を喪った今も尚。故に独りでも立っていられるようになるべきと思ったの。北風が吹き、鈴を鳴らす。嗚呼、そんな訳ないでしょう。「私は貴方を、忘れない」

 

寒くて凍えそうです(>_<)