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拙いわたしの拙いぶろぐ

駄目人間代表が適当に書いた小咄をまとめて載せたり、大好きな戦国夫婦について語るだけ

ついのべ54

ついのべログ

購買欲がふつふつと…

 

去ることを選んだ者は、追わぬが花。昔、誰かがそんなことを言っていたような気もするけれど、と見て見ぬ振りの大人たちの中を走り抜ける。待ちなさいと母の声が聞こえる。だが、生憎私は諦めが悪く、そんなものには構わない。やっと掴まえた君を去らせはしないと囁いた。「きっともう君以上なんて、」

 

狡いです、顔を真っ赤に染め瞳を潤ます君がぼそりと呟いた。「狡い、俺が」こくん、君は頷く。「私ばっかり、余裕がないみたい」おや、どうやらこの無垢な少女は男は格好つけるものだと知らないらしい。さて、どうやって本当のところを知ってもらおうか。悪戯心に君の唇を奪ってさ。「余裕なんてない」

 

あの幼い日、桜吹雪が連れてきたお姫さまは、人前で端正な顔を崩すことを恐れ生きてきたように感じた。それでも己にだけは張り詰めた糸を緩め、色んな表情を見せてくれたのは気の所為ではないだろう。だから泣き顔も、怒り顔さえも愛しい。だけど、最期に選べるのならさ。「おまえの笑った顔が見たい」

 

贈られた言葉たち、楽しげな笑い声も、妖艶な微笑みも、頬に触れた指先も。全部全部、貴方にとってはきっと遊びなのでしょう。だからもう、これ以上期待させないで。「期待させて、困るのは貴方でしょう」背にしがみつき泣いてしまう私は馬鹿だから、期待を膨らませてしまうの。だから、ねえ、お願い。

 

言葉にしなければ伝わらない想いも有るのです。貴方は特に口数が少ないから、私は時折不安になるのです。だからですね、一方的に話す私を貴方は目を丸くして見つめる。「貴方の愛の言葉を教えて」冬だからかしら、無意識に触れた貴方の頬がひんやりと冷たい。そんな中、徐ろに開いた口は答えを紡いだ。

 

触れる、指先と指先が、アツイ。ふっと笑みを零す彼にしてやられた気持ちになって、せめてもの抗いと唇を尖らせる。「なんだよ、不服そうだな」ニヤニヤと見てくる彼が何だか腹立たしいから、鼻をスンと鳴らして言ってやる。「あんたのこと好きになるなんて、思ってなかったから」彼はやっぱり笑った。

 

なんでだよ、と吐き捨てるように零された言葉を悲しいかな、この敏い耳は器用に拾う。思わず逆上しそうになった感情を抑え、顔を歪める彼にあからさまに溜め息をしてみせる。「どうしてって、理由を言ってもいいの」言えばきっと君は困るでしょうに。小さな呟きは幸か不幸か、彼に聞こえはしなかった。

 

「ふたりぼっちで生きてみるか」きっとお互いに縋っていた手を離すのが恐ろしく、身を寄せたまま呟いた言葉は自分でも思うほど馬鹿げていた。「それもいいかもねえ」彼女は呆れることも怒ることもなく、繋いだ手にぎゅっと力を込めて微笑う。噫、その優しさが妙につらくて、鼻の奥がさツンとするんだ。

 

陽だまりのような君の微笑みを、いつも憶う。「君がいなくても生きてはいけるだろうけど、」言葉を止めた僕に君はやっぱり微笑んでいて、嗚呼、無性に抱きしめたくなる。「それでも君がいたほうがずっと、僕は倖せだ」僕の言葉に君が微笑みのまま涙を流して、私もですと囁くから。もう我慢ならないや。

 

零れ落ちる、想いが、気持ちが。「貴方が私だけのものならいいのにって時々考えるんです」こんなことを言っても貴方は困るだけだと知っていて、それでも口にせずにはいられず。伏した目は貴方の瞳を盗み見る。それは穏やかな色をしていて、噫、微笑んでいるのだと気づき、どうにも胸が締め付けられた。

 

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