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拙いわたしの拙いぶろぐ

駄目人間代表が適当に書いた小咄をまとめて載せたり、大好きな戦国夫婦について語るだけ

ついのべ55

ついのべログ

またまた色々考え中。。。

 

さようならの刻が近づいていると知ったその時から、ずっと心配だったのは私が去った未来の貴方のことで。私を諦めきれない貴方は目の下に隈を作った酷い顔で、私に微笑う。ねえ、もういいんだよ。そう告げれば貴方は泣きそうに目元を歪めるから、私は貴方をそっと抱きしめて囁くの。(幸せになってね)

 

君を失った春が過ぎ、夏秋冬と終えてもきっと、君を忘れることはできないだろう。最愛を喪う哀しみは想像していたよりもずっと酷で、僕は今も君の記憶ばかりを追ってしまう。(私のことは忘れて下さい)君はそう言って弱々しく微笑んだけど、そんなことできるはずもないと君も、わかっていたんだろう?

 

生温く濡れた頬を、指先で撫でる。「最後に逢えて、幸せだ」最後だからと、一度しか言わないからと零した本音に君は、「ばか」と呟いてまた涙を溢れさせる。噫、その泣き顔は私だけのものだから、どうか他の男の前で泣かないでくれ。「本当に、貴方ってばか」君の瞳が光に反射してゆらゆらと揺らめく。

 

この一生で、私は貴方にどれだけ愛を伝えられたろうか。幾つの愛を紡いだろうか。今となっては数えることすら難しいけれど、窓から見える空は蒼く澄み渡っているから、きっと解らないままでいいのだろう。あと幾ばくかの命、最期までに伝えられるだけ、紡げるだけ、貴方に贈りたいものは。(愛してる)

 

潤む瞳、赤らむ頬、桃の香り漂う唇。向けられたのは他でもない自分で、くらりとした頭を押さえる。「私が君を好きだと知っていて、そんな顔をするのか」此方の尋ねに彼女はにっこりと微笑んで、それから。「とうぜん」その小悪魔な応えも存外悪くないと思ってしまうのだから、きっともう手遅れなのだ。

 

口と口で交わす、それはなんと儚く愚か。言葉を発しようとする唇を人差し指で制止して、ふわりと微笑んでみせた。「約束はいらない」睦み合う恋人同士じゃあないんだから、私と貴方にはそんなもの、一つも必要ないでしょう。貴方は瞬きの一つもせず私を見つめ、そっと口を開く。紡ぐは肯定か、否定か。

 

笑ってくれても構わない。拒んでくれても構わない。だけど、一つだけ懇願することは恐らくおまえを惑わせてしまう。「冗談にはしないでくれ」縋るように呟いた言葉に、おまえはわかりやすく視線を揺らす。笑い話にしようとしていたおまえの緩ませた口元が歪んで、その端からあやふやに俺の名が零れた。

 

いつも肩肘張って生きている貴方だから、私はできるだけ貴方に優しくしたいのです。厳格そうなその姿も素敵だけれど、私が見たい貴方はそういうのではなくて、膝に貴方を誘う。照れからか此方を見てくれない貴方の頭を撫で、頬に接吻を落としたら貴方はきっと真っ赤になった顔を見せてくれるでしょう。

 

涙がさ、止まらない私の頭をぽんぽんと撫でて、お兄さんぶった顔であなたは言うんだ。「泣かないでくれよ、笑ってくれ。最後のお願いだ。な?」にかりとした拍子に見えた八重歯が子どもの頃から変わらなくて、嗚呼、やっぱり泣けてくる。あの何も知らずに手を繋いでいた幼い日に戻れたらいいのに、と。

 

さようならは何か違って、だけどまたねも何処か違う。最後に残すあなたへの言葉を探すけど、口からは息の音しか出てこない。そんな私を見兼ね、寂しくなるなと笑うあなたが本当に寂しそうだから、思わず抱き着いてしまって。広い胸としっかりした腕に抱きとめられた私は囁いた。「また、逢いに行くよ」

 

うん、がんばる。