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拙いわたしの拙いぶろぐ

駄目人間代表が適当に書いた小咄をまとめて載せたり、大好きな戦国夫婦について語るだけ

ついのべ56

祖母からネックレスを譲り受けました*ଘ(੭*ˊᵕˋ)੭* ੈ♡‧₊˚

 

お喋りなあなたの唇にそっと人差し指を、それから私はあなたに微笑みかける。お願いがあるの。おまえの願いなら何でも叶えようじゃないか。笑うあなたが可愛くて可哀想で、噫、凡てに嫌気がさしてくる。「目を閉じて」そうして優しいあなたは私の願いをいとも容易く聞き届け、闇夜に葬られるのだろう。

 

哀しいな、あなたの呟きに風が止む。上手くいかないんだ、私を見つめるあなたの切れ目が優しくて、胸の奥がきゅっとする。「綺麗な感情だけをおまえに渡したいのに」おかしなことを言うのね。白い息を吐いた私には、あなたが勝手に思っていることなんてどうでもよくて。「私はあなたの全部がほしいよ」

 

愛しい笑顔が泣きそうに歪んで、どうしようもなく抱きしめたくなる。最後まで言わせてとそれを制して君は最後の台詞を紡ぐのだ。「愛してくれてありがとう」夕焼けに染まる白い部屋、君の着ている水玉模様のパジャマ。涙が溢れそうで上を向いた先に、何も知らなかった日に描いた馬鹿みたいな未来図。

 

ずっと一緒にいたいね。右も左も分からなかった頃君が言った、無邪気な約束。屈託のない笑顔にあの日俺は、君の幸せを守り抜くと決めた、はずで。いなくなっちゃやだ、泣きじゃくる君の顔すらもう遠くてその涙を拭うこともできない。約束守れなくてごめんな。でも俺は、いつまでも君の幸せを願ってる。

 

人生に悔いなし、などといった大それたことはとても言えやしないが、と男は瞬く星を数えながら一人思う。この長いようで短かった一生、やり残した事はない。だが、一つだけ思い残すことがあった。(貴女を一人にするのは心配だ)ベッドを枕にして眠る女の寝顔に目尻に皺を寄せ、男はそっと息を吐いた。

 

その大きな手が優しくわたしのやせ細った手を取る、包み込む、握りしめる。その行動ひとつで貴方がわたしを大事にしてくれていることをひしひしと感じて、噫、その日が恐ろしくなる。優しくてあたたかい貴方へ、微笑みに紛らせて、ひとつだけお願いを言ってもいいですか。(私のことで、悲しまないで)

 

温いようでいて、冷たさも含んでいて、それでもあたたかく優しい場所。ここに巣食う者には、例外なくこの場を去る日がやって来る。その日を越えても共にいようと繋いだ手と口約束は、脆くて弱くて小さくて、時々不安になる。「大丈夫」いつの間にやら無垢な少女から大人の女性になっていた君は、優雅に微笑し僕の頬に手を添えた。「二人なら、何も怖いものなんてないわ」

 

窓辺に佇む彼が、一つ欠伸をする。月は翳っていて、窓の外は暗い。私は足音静かに彼へと近付くと、夢中になっている分厚い本をひょいと取り上げた。「あっ」彼は機嫌を損ねたように、短く声を上げる。「今日はもう、お終い」貴方に放ったらかされていた、私の相手をして頂戴。そう告げて出来るだけ艶めかしく笑ってみせれば、彼は微笑し私の腕を引いた。

 

朝日の下、あなたの後ろ姿をずっと見ていた。先を行くあなたは、振り返ることなく歩を進める。あの懐かしい別れの日とは反対で、私があなたを名残惜しく見送っている。「...あのね」好きだったの。愛していたの。共にいたあの頃も、決別したあの日も、今も。でも、別れを選んだのは私で、あなたは振り返らない。「...きっとこれで、いいのよね」さようなら、愛する人くるりと背を返して歩き出した。

 

色味を失った頬に、指先で触れる。「...冷たい、や」これまでに何度と触れたはずなのに、どうしてだろう、全く違うものに思えてしまう。柔らかくて、滑らかで、いつも桜色に染まっていた、あたたかい頬だった。それが今は、恐ろしい程に真白で、硬みに帯びていて、氷のように冷たい。噫、これが、死んで朽ちてゆくということ。善四郎はその頬に一つ、口付けを落とす。「おやすみ、花」いつまでも君が、花畑で眠っていられますように。

 

大事に使いたいものです(*^^*)